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大人になっていちばん怖いもの

by SAKI.S

子どものころって、怖いもので溢れていたと思う。

私がいちばん怖かったのは、小さいころ住んでいたおばあちゃんちの、トイレまで続く廊下だった。

離れにあるってほどでもないんだけれど、家族が集う台所からは離れていたので、廊下はいつも真っ暗だった。田舎だから、外から入ってくる光もほとんどない。

怖くていつも、誰かについてきてもらっていた。一度外からおばに(からかいのつもりで)電気を消されたときは、一瞬で真っ暗になって、大泣きして台所まで走って戻ったのを今でも鮮明に覚えている。よっぽど怖かったんだろう。

大人になった今でも暗闇への恐怖はあるけれど、子どものころに感じていたありありとしたそれはなくなった。

そんな私が今いちばん怖いものは、自分自身である。ふとした瞬間に見てしまう、自分の醜い感情が、怖いのだ。

村上春樹最新作「騎士団長殺し」のなかで、主人公が「女の首をそのまましめてしまいそうで怖かった」というシーンがあるんだけれど、私はそのシーンがとても印象に残っている。私も「わかって」しまったからだ。

人の感情を傷つけたいという残忍さとか、どろどろとした嫉妬とか、もうこの人とは関係がきれてもいいやというなげやりな気持ちとか、他人の不幸をどこかで喜ぶ気持ちとか。

普段はそんな感情なんてもってない、って思いこんで生きているから、ふとした瞬間にそういった醜い感情に襲われると思わず目を背けたくなり、認めたくないからつい他の人を責めてしまいたくなる。

それでも、おそるおそる目を向けてみる。事実を認めるのが、こんなにも胸がきりきりするなんて。

どうしようもない感情をもってしまう可能性を抱えて生きることは、とても怖い。目も耳も塞いでしまいたくなる。

それでも、胸は痛むけれど向き合っていかないといかない。人は不思議にも、「あると事実を認めてしまう」ことで、そんな感情がおさまったりするから。

身近な人と生きていくことは、自分の新たな面を見ざるをえないことでもあるけれど、でもそれでも。

自分と向き合う恐怖よりも人への愛が、勝ればいいなと思う。

それでは、また。




SAKI.S
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