美味しさの出どころは

新しい家(といっても築50年)に引っ越してからというもの、ごはんがめっきりまずくなった。体重が2〜3キロ落ちている。ズボンのウエストがゆるくなって気持ち悪い。
つくっているものは同じなのに、なんで美味しくないんだろう、と最初の1ヶ月くらいは疑問だった。確かに、実家のときより古くなった新しい炊飯器は、分量どおりに水を入れてもなぜかごはんは柔らかく炊かれている。それとも1ヶ月の食費を明確に設定して、鶏肉ばっかり買うようになったからだろうか。
なんてことを考えていたんだけれど、プラスチックのお茶碗でごはんを食べていたときに気がついた。あ、もしかして、食べる環境が整っていないからじゃないかな、と。
食器がおばあちゃんちに大量にあるとのことだったので、送ってもらうまでは、とりあえずの食器で食べていたのだ。プラスチックの、サイズ不揃いのお茶碗。同じくプラスチックのお椀。
お肉を焼くとすぐ焦げ付くフライパン。水がはねるお鍋。
小さいお皿がないので大きな丸皿に、ミスマッチな食パンを置いたり、100均のピーラーでちょっとイライラしながらにんじんの皮を剥いたり。
料理って、つくる過程から味わっているし、お皿やお椀に入れる段階で、すでに食べているんだ。
目で見て、耳で聞いて、手でお椀に触れて、そのあとやっと、舌で味わう。
全てひっくるめて、食べることだったんだ。
そんなことを思ってからというもの、少しずつ食器や調理器具で良いものを揃えようと、整えている。
引き出物で注文した、鉄のフライパン。焦げ付くことが全くなくなって、手入れは少し大変だけれど、玉ねぎなどを炒めるのが楽しくなった。
調理器具と食器の宝庫である合羽橋で買った、セレクト100と書かれたピーラー。こんな専門店にあるんだからきっと大丈夫だろう、とぱっと買ったピーラーは、期待を大きく上回る働きをしてくれている。
にんじんもかぶも、皮がするする剥けて、それがあまりに快感で、思わず全部剥いてしまいそうになる。
同じく購入した果物ナイフも、ミニトマトがつぶれることなくすっと切れる。
木の食器が好きなので、無印でアカシアのスクエアプレートを買う。
少し値ははるけれど、自分で選んで、自分で買った食器や調理器具は、愛着がわく。
料理しているときも、盛り付けるときも楽しめるので、結果としてごはんが美味しく感じられる。
一緒に食べる人がいるかいないかでも、美味しさが違ってくる。ちょっと失敗しても、あ〜塩入れすぎたね、と話しながら食べるだけで、満足できたりするから不思議だ。
グルメじゃないし、一人でいると料理以前に食べることがめんどうだと思ってしまうので、今まであまりに食べることに無頓着だった。
でも毎日のことだし、生きることの根幹だし、外で食べると味が濃くて続かないので、せっかく家でつくって食べるんだったら、美味しくしていきたい。
というわけで、アンドプレミアムのキッチン特集を買ってみたり、キナリノで食器特集を見たりしている。今まで興味なかった世界に、新たに関心を持てるのいうのは、世界が広がるようでいつも楽しい。
あれ、こういうのを所帯じみてくと言うんだろうか...。
それでは、また。
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SAKI.S