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たまごサンドイッチ

by SAKI.S

おお、寒い。寒いと感じたのなんていつぶりだろう。

サンダルから飛び出て、雨に濡れた指先がかじかむ。感覚がなくなってくる。おいおい、昨日までクーラーつけて寝ていたのだよ。

秋の長雨を経て、夏から秋に変わるんだと初めて肌が知った。

たまごサンドにはまっている。サンドイッチはシンプルであればあるほど美味しいみたい。マスタードにはさまれた分厚い卵焼きか、クラッシュされたゆでたまごか。

ていねいなサンドイッチ屋さんだから、卵焼きサンドかゆで卵サンドかで五分は悩む。贅沢な九月日曜の午後の悩み。

結局、ゆで卵の方を取る。サンドイッチのパンは、サンドイッチのためだけに存在しているかのような繊細な薄さで、指で軽く押さえるとすぐ指圧に負けてしまう。

だからそっとつまみあげて、そっと口のなかへ運ぶ。せんさいなつまみ細工みたい。

左手でもぐもぐしながら右手でページを繰る。村上春樹の雨天炎天。疲弊するギリシャ、不毛なトルコ。こんな旅したくないと思いながら、でも無性にギリシャとトルコに行きたくなる。

ほぼ読み終わりそうなところで食べ終わる。ゆで卵サンドイッチ。ちょっと早いけれど晩ごはんがわり。ひとりでお店に入って食べるサンドイッチはすごく贅沢に感じる。しゃべる相手がいないから、ひたすら卵とパンに向き合う。

お金を払って外に出たらすでに暗くなっていた。秋は私より早くその影を濃くしている。髪をなでる風が穏やかな空気を含む。

それでは、また。

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